泌尿器科医師の外来
以下、先生とのやり取りです。
録音を元になるべく先生の言ったことを忠実に再現しています。
麻酔科を今日受けてきましたか。(はい)
手術のご説明をしますね。
これ前にもお見せしましたね。(はい)
左の腎臓に2センチぐらいの腫瘍があります。
左の腎の一番下のところですね。
画像上は、腎臓の癌が疑わしいかなと思っているんですけれども、
だいたい3%~5%ぐらいで癌ではないことがあるんですね。
癌の場合は4センチ未満が一番早期の癌と言われているので、
ステージ1の初期の腎癌を疑っている。
治療の選択肢は、腎臓の腫瘍だけ取ってくる部分切除と、
腎臓自体取っちゃう方法と、手術できないような人には、
針刺して凍らせるような治療をやってたりもします。
基本的に手術できる場合は、
手術で取っちゃうというのが基本で、
腎臓ふたつあるんですけど、
当然機能を残せるのであれば残した方がいいので、
腎臓の部分切除というのを予定しています。
ロボット手術というのはですね、腹腔鏡手術の一種なんですね。
小さい傷で行う手術で、手術する時って患者さんは、
左側を上にして横になっているような、
横向きの状態で手術をします。
傷口は5か所くらい、こんな感じになるんです。
昔、お腹開けてた頃は、
ここをズバッと切ってたんですね。こんな感じで。
こういう違いがあります。
取っても残しても生存率とかは変わらないので、
残せるものは残した方がいいでしょうということです。
腎臓がこうなってて、
腫瘍が存在しているのがここらへんなんです。
腎臓は、太い動脈の腎動脈というのと、
静脈、腎静脈というのがあります。
腎臓自体、おしっこを作っている臓器なんですけど、
動脈からこう流れていって、つくられたやつが、
こう尿の通り道を流れていって、
そうじゃないやつはこうもどってくる。
腎臓の特徴は、血流が非常に多いんですね。
1.5リッターぐらい流れています。1分間に。
腫瘍を取ってくる場合は、ハサミでチョキチョキ切ってですね、
切った後、この欠損部分は糸で縫ってきてるんですね。
こうなってここをすっぽり、糸で縫ってきてるんですね、何針も。
それで閉鎖するっていうような手術なんですけども、
そのままやると、血がビュービュー出て、何も見えないので、
実際、手術で腫瘍を切ったり縫ったりするときは、
洗濯ばさみみたいなので、腎動脈の血流を遮断してるんですね。
血流を遮断することを、阻血というふうに呼んでいますけれども、
腎臓の機能が悪くなっていっちゃうんで、
切って、縫ってっていうのをなるべく、
30分ぐらいまでに抑える必要があるので、
そこらへんが大変な操作になってきます。
お腹を開ける手術と、中でやってることはいっしょなんですけど、
傷が小さいというのが一番のメリットです。
術後の回復が早いというのもあります。
なかなか、縫ったり切ったりするのが大変な場合ですとか、
血が止まらない場合には、お腹開けたりとか、
腎臓を取る方法に切り替えざるを得ない可能性っていうのは、
少ないんですけど、一応あるということはご承知ください。
手術の方法なんですけども、手術中、
最初にいきなり腎臓をやるんじゃなくて、
おしっこの出口から内視鏡を入れて、
管をおしっこの通り道にいれてるんですね。
細い2ミリぐらいの管を、ここら辺においておいて、
実際に手術中に腎臓を切るときに、
ここから色がついた青い水をビュービュー流してるんですね。
尿の通り道が例えば切れちゃったりすると、
そこから色が出てきて、わかるようにしてるんですね。
なので、最初に尿管にステントっていう管を入れて、
それから横向きの体制になって、手術するって感じです。
傷が5か所ぐらいですね。
だいたい1、2センチぐらいの傷、こうやって作って、
腹腔鏡の操作をして、ロボットの操作をする。
流れは、先ほど申し上げたように、
腎臓の動脈を遮断して、腫瘍を切除して、
止血して、縫ってきて、出血がないことを確認して、
腫瘍を取り出して、傷口は縫って、それで終わりになります。
術後はですね、
どっかの傷から1か所1本ぴょこっと管が出てます。
ドレンっていう管で、手術したところは、
細かい出血とかリンパ液とか尿が出たりするので、
こういうのを出してあげる管が入ってます。
傷口は、抜糸がいらないかたちで縫ってきてます。
術後の経過としてはですね、
翌日からお水が飲めるのと、食事は2日目からとなります。
この手術、とくに出血が怖いので、
2日目まではベッドの上で過ごしてもらって、
それから歩いてもらってます。
歩いてトイレに行けるようになると、おしっこの管が抜けます。
手術して、3日、4日目ぐらいで、このお腹の管を抜いてます。
抜いた後は、シャワーが入れます。
順調な経過だと、術後、だいたい1週間ぐらいで退院になります。
術後2か月間は、出血しやすい時期なので、
激しい運動とか、お酒飲んだりとか、
1か月間は控えてもらってます。
退院したあとは、だいたい3~6か月に1回、
CT撮って再発がないかどうかチェックしています。
腎臓はけっこう遅れて出てくる場合もあるので、
病院で経過を見るのが5年ぐらいまで、
そのあとは、健康診断とかで、お腹の超音波とか、
胸の写真とかで、チェックしてもらうようにしています。
手術の合併症についてなんですけども、
出血がいちばん怖いもので、
術後1か月間、起こりやすい時期です。
ひどい血尿が出たりするのと、腰が痛くなったりします。
そういった時は、退院した後でも、
病院に来ていただく必要があります。
あと、尿ろうっていうのがあって、おしっこが漏れるんですね。
これは、腫瘍が尿路に近くて、尿の通り道がきれちゃった場合、
おしっこが漏れることがあって、その場合、ドレンっていう管が、
長期間入ったりですとか、入院が長くなったりする可能性があります。
いちばんひどいときは、もう一回手術したりとか、
最終的に腎臓を取ったりしなきゃいけないことが、
まれにあると言われています。
あとは、周りの臓器を損傷する可能性です。
左の腎臓だと腹部大動脈っていう非常に太い血管があるので、
そこに傷がついちゃうと結構大量出血するので、
それはもうお腹を開けなければいけないことがあります。
あと、感染症、100人にひとりぐらいですけど、
肺炎とか、尿路感染症、
術後、高い熱が続くことがあるので、抗生物質を使います。
あと、傷口の脱腸ですね。ヘルニアっていうのがあって、
手術が終わった後、けっこう太る人が多くて、太ったりすると、
ここから腸がポコッと、とびでてきたりするので、
術後あまり太らないように注意していただく必要があります。
あと、肺塞栓、脳梗塞、心筋梗塞って怖い病気があって、
これは日常生活で起きる可能性もあるんですけども、
手術室とかで麻酔をかけたり、手術したりすると、
手術後、少しリスクが若干高くなりますという程度のものです。
あとは、注意事項としては、
残した正常の腎臓に腫瘍が再発する可能性が、
2%ぐらいと言われています。
この場合は、また取るかどうかですね、
腎臓を取っちゃうこともあります。
あとは、腎臓を残しても、100%機能が残るかというと、
ちょっとそれは多少機能がさがるんですよ。
完全に戻る人もいますけど、少なくとも、
腫瘍で取った分は、腎臓は少なくなるのと、
血流を遮断した影響は多少でるかと思います。
一応、手術の説明はだいたい以上のような感じなんですけど、
確認しておきたいこととか、
何かわかりにくいところはいかがですか。
(よくわかりました)
大丈夫ですか。(はい)
手術当日、ご家族は誰かいらっしゃいますか。(来ると思います)
同意書に署名
生年月日確認
資料を受け取る
輸血の同意書(万が一のために)
今まで輸血したことはありますか。(ないです)
輸血で問題になるのが、感染症っていうのがあってですね、
よく知られているのが、B型肝炎、C型肝炎、HIVとかですね。
いちばんリスクが高いのが、C型肝炎で、
だいたい5千から1万回に1回未満といわれています。
B型肝炎とかHIVは、何十万回に1回未満ですね。
C型肝炎は、今は特効薬があって治る病気にはなってはいるんですけれども、
どうしてもこういう感染症のリスクは0にはならないんですよね。
なので、危険性があるので、安易に使うことはないんですけど、
血が出て、血圧が下がって来ちゃうような場合は、
使わせていただくことがありますね。
輸血の同意書に署名
なんか確認しておくこととかありませんか。(大丈夫です)
今日、同じ説明を4回しているので、だれにどこまで説明しているのか
わからなくなります。(笑)
手術前後、1か月間、予防接種しないように(はい)
それぐらいですね もう済ませましたか。(いいえ)
麻酔をかけられなくなるので。(やめておきます)
わかりました。今日はこれで終わりになります。あとは入院ですかね。
(日程は変わらないですか)
8日です。7日入院です。時間は電話がありますので。
(わかりました)
あとは、風邪をひかないように。太らないように。
よろしくお願いします。